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前回の記事、「誰かと話したくなる映画」如何だったであろうか。
ハロウィーンも終わり、世間は年末、忘年会シーズンへと照準を合わせだす季節だが
それと同様に、という事はそういう酒の席で良かれと思って己の映画知識をひけらかし、
周囲の女の子の顰蹙を買う季節が今年も我々の元にやってきた、という事である!!(?)
が、しかし!!やはりいいものを観たあとは誰かと話さずには居られないであろう。
という訳で、観終わった後、誰かと話したくなる映画5選
第2弾である。

SOMEWHERE

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日本公開:2011年
監督:ソフィア・コッポラ
脚本:ソフィア・コッポラ
主演:スティーブン・ドーフ エル・ファニング

「そこら辺に居そうだけど絶対に居ない美少女」を撮らせたら世界一のソフィア・コッポラだが
今回の主人公は、富も地位も「おそらくあるであろう」ハリウッドのスター俳優である。
俳優としての生活を送るジョニーだが、ある日から前妻との間に生まれた娘と少しの間、共同生活をする事になる。
「父親としての自分」を見つめ直したその時、彼は何を感じて、何を、どう捉える様になるのか。
特筆すべきなのは語り手が「作品上のすべてに於いて一線を引いた視点」
というものを最後まで崩さない事である。

「すべての人、モノ、事に関して何も言うつもりはない、ただあった事だけを話すよ。」
と言わんばかりだが、ただその距離感があるにも関わらず補足的な「説明」一切無しで
「映画的に」、巧みに語る事に成功している。
「その人にとってそれは、あの人は一体どういう存在なのだ?
そして今それはその人にどのように写っているのだ?」
そして人は最後に何を残して、何を捨てるのか。
ソフィア監督4作目にしてヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞した傑作。
相変わらず劇中歌も最高。

GOD BLESS AMERICA

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日本公開:2012年
監督:ボブキャット・ゴールドスウェイト
脚本:ボブキャット・ゴールドスウェイト
主演:ジョエル・マーレイ タラ・リン・バー

これを観ている人はおそらく「キック・アス」と「スーパー!」も観ているハズ。
「冴えない男が勝手にヴィジランテ(自警団)になりきる」映画としては
どうしても上記の2作と肩を並べる形になってしまうであろう。
仕事をクビになり、余命宣告をされた上に家族にも見捨てられてしまい、自殺を図ろうとしたが
テレビに映ったこまっしゃくれた女子高生セレブにお仕置きをする為に立ち上がり
道中で知り合った女子高生と「身勝手な世直し」をする男の話である。

原作よりも「アメリカンコミック」的にリアリティラインをぐっと下げた「キック・アス」に比べて
本作は3作の中でも最もリアルでビターである。
犯行に及ぶシーンではコメディタッチに描く事を貫いてはいるが
ラストのクライマックスでは受け手にぎょっとする「ある問題提起」を仕掛けてくるのである。

「こいつらの行動、今までやってきた事。お前、ノれたか?」
その質問に対して僕ら観客の「答え」。これこそ「キックアス」「スーパー!」とは大きく違う点である。
「ヴィジランテ3部作」としては非常にいい流れだとは思うが
実は他の2作よりあらゆる面で見劣りしているのも事実。(今考えると分が悪すぎるが・・・)
それでも「勝手にヴィジランテ」ものの「3番煎じ」に成り下がらなかった大きな要因は
この映画が掲げてるメッセージが他の2作と大きく異なっていたからであろう。

愛、アムール

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日本公開:2013年
監督:ミヒャエル・ハネケ
脚本:ミヒャエル・ハネケ
主演:ジャン=ルイ・トランティニャン エマニュエル・リヴァ

「後味の悪い映画を作らせたら世界一」のドイツの鬼才、ミヒャエル・ハネケの最新作。
音楽家である老夫婦ジョルジュとアンヌ。ある日、いつものように朝食をとっていたら
アンヌに異変が起き、病気の存在が明らかになり、その日から二人はアンヌの病気と闘う事になる。
そしてそれはお互いの愛を再確認する事でもあった。

シビレるのは始まった瞬間、「今から確実によくない事が起こる」という不穏な独特なカメラワーク。
なるほど確かにハネケの作品だ。それだけで「今私はハネケの作品を観ているのだ」と思える。
ただ、重苦しい空気や不吉な瞬間はもちろんだが、
老夫婦の日常の愛らしさ、キュートさも本作では存分に楽しめる。
チャーミングな2人を観ているとこれから年老いてゆくであろう自分を2人に重ね、
もし隣に愛する人が居れば抱き寄せるであろう。

だがそれに相反して劇中では私たちの未来の姿、ジョルジュとアンヌの
抵抗出来るはずもない「その時」は刻一刻と近づいていくのである。
世界中の愛する二人に確実に訪れる「最期」
そのとき、二人にあるものは果たして「愛」か?

インビクタス 負けざるものたち

imgres【INVICTUS 負けざるものたち】
日本公開:2009年
監督:クリント・イーストウッド
脚本:アンソニー・ペッカム
主演:モーガン・フリーマン マット・デイモン

「みんな大好き」クリント・イーストウッド監督の2009年作品
御年84歳を超えても尚、コンスタントに映画を撮り続ける映画界の怪物であるが
筆者個人的に、近年一番胸を打った映画が本作である。

27年の投獄生活を終えたネルソン・マンデラが白人学校とアパルトヘイトの境界線を
車で横断するところから物語は始まる。
初の黒人大統領となったマンデラだが当時低迷していたラグビーを通じて
再び黒人と白人の「和解」を試みる。
公開当時は「ネルソン・マンデラの伝記」と宣伝されていたが
本作の本質はそこではなく「invictus」(制服されない者)邦題はそれに加えて「負けざるものたち」
すなわち「絶対に負けられない戦いに挑む時、人は何をするのか」
それが本作の大きなテーマである。

筆者も本業はミュージシャンだが、「その瞬間」、少しでも誰かの気持ちを鼓舞出来るならばと
これを書いている今も強く感じているのである。

アメリカンビューティー

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日本公開:2000年
監督:サム・メンデス
脚本:アラン・ボール
主演:ケヴィン・スペイシー

筆者個人的に映画のオールタイムベストの1つに上げるほど思い入れが強い本作だが
監督は「007スカイフォール」でお馴染みのサム・メンデス。
なんと本作は監督第1作目にしてアカデミー賞、ゴールデングローブ賞、大英帝国勲章と
数々の賞を総なめにした大傑作である。

ケヴィン・スペイシー演じる冴えないサラリーマン、レスターが娘の同級生に恋をし、
その瞬間から今まで従順してきた「アメリカ人としての良き事」から徐々に逸脱し始める。
なりふり構わず行動し始めたレスターに最初は家族も近所の連中も不快感を抱くが
その姿をみるにつれて自身の本質が露わになり、次々と自我が崩壊していく。
「アメリカンビューティー」、前述したように「アメリカ人としての良き事」と筆者は訳したのだが
本作は、古くはキリスト教にも由来する絶対的にあるアメリカ人としての価値観、理想像に
彼らは知らずして囚われている、という事を痛快に皮肉し、
そして「あるきっかけ」で崩れだす人々の様は
確固たる「理想像」の危うさ、脆さを表現しており
それをイギリス人の監督が巧みに作り出す構造含め
非常にシニカルで批評的な作品である。

「アメリカ人」である以上、誰しもが「アメリカ人」でありたいと願い
それが「アメリカ人」にとって「良き事」と信じて止まない。
しかしその「良き事」がある日を境に自分にとって「良き事」でなくなったら?
その時「アメリカ人」は何を願うのであろう。
因みに、監督のサム・メンデス。私の記事で言うと前回紹介した「おとなのけんか」に出演していた
ケイト・ウィンスレットの旦那さんである。


如何だったであろうか。前回にも増して偏った5選ではあったが
冒頭で語った通り、どの作品も非常に深く、様々な視点で語る事ができる作品ばかりである。
ただし、やはりこれから先の女子を交えた飲み会ではそのような談義を持ちかける事はおすすめしない。

絶好のタイミング、それはこのサイト「JESSEE」で仕入れた
ネイマールのファッションを取り入れ、
渋谷のバルに女の子を誘い出し、
お気に入りの家具を揃えた部屋に招待し、
彼女が君の棚に置いてあるこれらのDVDを発見した時。
その時こそ絶好のタイミングである。